過去に1,000件を超える不動産を内見し、内見家を自称する僕ですが、集合住宅のジャンルの中では過去イチ衝撃を受けたのがこの物件。
約1.6万㎡の広大な公園のような敷地の南傾斜の地形を活かし、各部屋に大きなルーフバルコニーを備えた緑あふれる低層マンションの、3階ワンフロア占有。
起伏ある地形にひな壇状に建てられており、上階からの荷重が少ないためか、約50畳のLDKには柱梁の凹凸がなく、見たことがないほどワイドな開口部から、緑と青空しか見えない眺望が広がります。
手前側約半分がウッドデッキになった、約70㎡、畳数にしてなんと42畳もある大きなルーフガーデンに立つと、もはやここがどこなのか分からなくなる不思議な感覚に陥ります。
草で覆い尽くされたルーフガーデンの奥半分には、高さ3m以内の樹木までは植樹OK!ということで、夢のようなお庭を作り込んでみたいところ。
ゆとりある間取り、なんて一般的な言葉を使うのを憚られるほど巨大な約208㎡の室内に、東京の一般的な家庭に生まれ育った僕のヒューマンスケールは簡単にバグってしまいました。
でもね、建築費高騰の時代に、この広さをフルリノベーションしたらさぞかしお高いんでしょう?と不安になるのはごもっともですが、間取りは変更の必要がないほどよく、水回りは近年リフォームされていると思われ、いたってキレイ。
賃貸の原状回復レベルの修繕でも十分に住めそうな状態で、むしろこの雰囲気が好きな方もいそう。改装費は最低限で500万円以内で抑えるプランから、フルリノベであれば5,000万円かかっても驚かないほど、幅広いレンジになりそうです。
各住戸1台分の駐車場使用権があり、トランクルームも付帯し、ペットの飼育も可能。庭も作り込めるとなれば、まさに戸建のライフスタイルが実現できる集合住宅だといえます。
駅からマンションまでアップダウンのある徒歩11分と決して楽な道のりではありませんが、マンションの正面と裏口から駅までのコミュニティバス(月、火、木、金のみ運行)も利用可能です。
敷地に入っても丘の地形を上り、エレベータなしの3階までさらに上る必要ありと、足腰に自信のある方にしか向きませんが、そんなことはどうでもいいから絶対にここに住んでみたい!と思わせるだけの魅力がある物件です。
斜面の魔術師とも称された建築家・井出共治氏の作品に、僕は完全に魅了されました。ここにはエレベーターがなくても味わいたい風景があります。これは集合住宅界の金字塔。
内見される方に1つ注意点があります。一度この部屋を見てしまい、この物件が不動産購入判断の基準になってしまうとハードルが上がりすぎ、以後の不動産選びをこじらせる恐れがあります。この物件を購入される可能性がゼロだ、という場合は、絶対に内見しないことを強くおすすめします。